2023.09.25 05:11特許の外国出願をしないと、ファンドも振り向いてくれない?(写真のWIPOは、特許の国際出願の事務局です。)「特許の外国出願をしないと、ファンドも振り向いてくれないのですか?」という質問を、最近、技術系のスタートアップの経営者の方々から頻繁に受けます。ソーシャルビジネスを立ち上げようとしている方々からも、時々、質問されます。かなりの部分で、外国への特許出願無しでは、なかなかファンドの目に留まらないと私は思います。 自らの技術を、どう評価するのか、客観的な評価を求める方法として、特許の審査があると捉えるファンドが多いことと、参入障壁の構築や、経営者の知的財産制度の理解度をファンド側が客観的に評価している、とも言えます。他方、特許の国際出願(PCT出願)における、国際調査レポート(審査ではありません特許性等の内容...
2023.09.20 11:21社員による情報漏洩が一番怖い!?先般も元社員による名刺情報の漏洩による逮捕者が出たことが報道されました。個人情報の漏洩ということで個人情報保護法を用いた形でしたが、実際には、事業を行う上での重要な情報は、顧客情報や取引先の情報だけではありません。例えば、技術情報も極めて重要な情報と言えます。 この技術情報の秘密保護は、不正競争防止法で規制されていますが、その理解は、まだまだ進んでいないと思います。 (そもそも、不正競争防止法を知らない方も多いと思います。) とはいえ、新聞沙汰になりのは、その大半が、退職者の話です。しかし、本当に気をつける必要があるのは、いままさに在籍する社員です。もちろん、社員をやみくもに疑うのは、一種のハラスメントになる可能性がありますので、十分な注意が必要です...
2023.09.11 02:16特許って、本当に取らなきゃだめ?「特許って、取らないとダメなんですか?」 そんな質問を、多くの中小企業の社長から受けます。 また、最近は、スタートアップ企業の人からも聞くようになっています。私の答えは、いずれの方に対しても同じ感じです。「特許の出願は必須ではないので、経営判断として決めて下さい。 但し、銀行はともかく、ファンドは特許出願が出資の必須条件にしている場合が多いので、それをどう考えるか次第です。」これで、お気づきかと思いますが、世界的に見れば、技術系の会社で特許出願しないような会社は相手にされない、ということです。「日本国内だけの狭い市場だけで勝負するのだし、融資も不要だ!」という声が聞こえて来そうですが、それも経営判断です。不思議なもので、そう言う経営者に限って...
2023.08.28 06:13「X」に問題がありそうに見えるのは、なぜ?Twitterが、その名称を「X」にしたことから、日本においては、特に多くの反響が出ているのではないでしょうか。著名なロックバンドの名称と被る、というのが、その理由でしょう。そして、そんな議論の中心は、「商標登録」ということのようです。ただ、ここで最初に考えないといけないのは、旧Twitterもロックバンドも事業を行っており、両者の間にビジネス内容に違いがある、というところを基礎として考えなければならないと思います。ここでは詳しくは書きませんが、このような状況では、商標登録の問題を論じても、あまり意味をなさない、ということです。問題は、ビジネス内容が大きく異なっていても、消費者が両者を混同する可能性があるか否か、もしくは実際に混同されているか、というこ...
2023.08.20 05:12商標調査の落とし穴商標について、お客様から、「自分で調べてみたところ、同じ名称の商標登録がなかったので、出願したいのだけれど!」というご連絡をいただくケースがかなりの数あります。ただ、その多くの場合、実際には既に同一や類似の登録があってダメ、というのが現実です。「大丈夫なはず!」という想いで調べるのと、「ダメなはず!」という感覚で調べるのでは、結果に大きな違いが出てしまう、というのが現実だとは思いますが・・・精神論はともかく、調査の経験がない方々のための注意点を、いくつかお示ししたいと思います。 1.JPlatPatの簡易検索を用いないトップページの商標の簡易検索では、調査がほぼできないと考えていただいた方が 安全です。 下記の称呼類似や類似群コードによる検...
2023.06.06 04:50製造していなくても販売したら侵害?「他社が特許権を持っている商品を販売したいのですが、権利者以外の他社が海外で製造したものを仕入れて(輸入して)販売したいのですが、自社で製造していないから、特許権の侵害にはなりませんよね!?」 このような相談も、結構多いです。例えば、中国の国内で、実際に販売されている商品が目にとまって日本で販売できれば、という経緯なのではないでしょうか。 このようなケースの場合、中国では特許権は取得されていないものの、日本では他社の特許権が存在する、という状況なのかと思います。日本の特許法(内容的には、実用新案法や意匠法でもほぼ同じなのですが)では、侵害行為を「実施」ということで、「実施」の具体的な内容を定義しています。特許法第2条第3項 この法律で発明について「実...
2023.06.03 05:53販売開始後やHPにアップした後は、意匠登録できない!?商品のデザインに関係して、実際に商品を販売し始めた後に、デザインの評判が良いので、意匠登録出願をしたいというニーズが、本当に多くあります。これは、商品デザインのビジネスの特徴だと思います。ところが、意匠法の原則では、商品を販売した後(通販サイトでのアップを含む)や、商品の写真をHPにアップしたり、商品デザインを公開してしまった後は、その行為を行ったのが自分(自社)自身でも、意匠登録はできません。いわゆる、新規性を喪失してしまった状態になったからです。ただ、それでは、創作者に酷なので、救済策として、「新規性喪失の例外」制度が用意されています。 自らが公開した日から1年以内に、所定の手続きを伴った意匠登録出願を行い、且つ、その意匠登録出願の日から30日以内...
2023.04.26 03:31マネしなければ許される?「特許や商標は、たとえ同じや似たものでも、本物をマネしていなければOKですよね?」 そんな言葉を、頻繁に聞きます。「それでもアウトです!」と言い切ると、大体、言った弁理士は嫌われます。 弁理士の発言が、法律に基づく説明であっても、「どうあれ自分を守ってくれるのが弁護士や弁理士だ!」という想いが根底にあるのだと思いますが・・・でも、ダメなものはダメです。特許法第103条に、下記の定めがあります(実用新案法、意匠法、商標法にも同様の定めがあります。)。「他人の特許権又は専用実施権を侵害し た者は、その侵害の行為について過失があつたものと推定 する。」難しい表現ですが、つまり、マネの有無にかかわらずダメという意味で、「マネていなければOK」という論...
2023.04.21 00:11実用新案って、価値がない?「実用新案は、国の審査が無いから価値がない!」、という人は、正直多いと思います。確かに、独占権によって他人を排除することを目的とするのであれば、実用新案に対する一般的な見方だと、私も思います。しかし、そもそも産業財産権制度の中の特許・実案・意匠)の最大の目的は、他者の排除ではありません。他者を排除することは、法の目的からすると、消極的な効果でしかありません。ちなみに、実用新案法の第1条の目的には 「この法律は、物品の形状、構造又は組合せに係る考案の保護及び利用を図ることにより、その考案を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。」 と記されています。これこそが、正に、実用新案権の存在目的なのです。特に、コロナ禍で企業の商品開発に対する意欲にブ...
2023.04.17 00:57放置(無関心)は危険な建築物の意匠登録 2020年4月から、意匠法が改正され、建築物や内装の意匠登録が可能になりました。 ただ、大手メーカーさんは、着実に意匠権による保護を進めているようですが、建築業界として、必ずしも浸透しているとは言えないと私は思っています。「昔からありふれた建築デザインが、意匠登録されるわけないんでしょ?! だから関係ないよ!」 そんな言葉を多く聞きます。 つまり、建設業界の人が思っている「昔からありふれた建築デザイン」と意匠登録出願における新規性や創作容易性には、根本的な違いがあると思います。 その一方で、信頼性の高い建築物を建てようと思った場合、過去に実績のある構造やデザインを採用することでリスクを軽減している側面が、建設業界にはある...
2023.04.11 12:45特許事務所の事務所報酬の違い(商標編)「そちらの事務所の商標の出願の費用は、どうして高いのですか?」 最近、かつてインターネットを介して廉価な特許事務所に依頼して商標登録を得た会社さんからの相談が、増えています。 取引先から、「販売する商品やサービスが、すでに持って居る商標権の範囲には、入っていませんよ!」と言われ、慌てて、当方のような地元の特許事務所に連絡をされてくるようです。 特に、私の事務所にお電話をされる方は、ホームページで最寄りの特許事務所を探していると事務所の名称に「商標」と入っていた、と言われます。とはいえ、私の事務所のホームページに掲載されている料金表を見て、びっくりされるようです。 特許事務所の料金は、基本的には、仕事量(作業時間)に応じて定められているます。 ...